トップ1%の人だけが実践している思考の法則【要約】

ビジネス

今までのビジネススキル、思考法では生き残れない

既存のスキル、フレームワークは効率化、コスト削減において有効でもイノベーションを起こして

起業を軌道に乗せ事業を長期で存続させるには不十分です。

既存路線の枠組み、ルールの上では大きく成長することはできません。

イノベーションを起こさなければ、既存路線のなかで疲弊し、市場から消えていくのを待つだけに

なります。

継続的成長と繁栄のためには、「5Aサイクル」という、イノベーターに共通する

「思考と行動の法則」を実践して、既存路線から抜け出し、ルールを作る側に回る

必要があります。

5Aサイクルとは

リクルートで新規事業を次々に立ち上げ、独立してベンチャー企業を設立した永田豊志さんが、

経営のかたわら、ビジネス書の執筆、講演を通じて、様々な企業を研究する中で、導き出した

イノベーションを起こす思考と行動の循環システム思考です。

次の5つのプロセスからなります。

・顧客の抱える問題の「認知」(Awareness)

・問題解決のための従来と異なる「アプローチ」(Approach)

・アイディアのスピーディな「実行」(Action)

・仮説と実行結果の差異に対する「分析」(Analysis)

・マーケットニーズに合わせた柔軟な「適応」(Adjustment)

簡単に言うとチャンスを見つけ、構想を練り、実行し、結果を検討し修正する。このサイクルを

高速で回し続けることで、新たな価値を創造し、未来を創ることが可能になります。

第1のプロセス 顧客の問題を「認知」する

人はポジティブなものを増やすより、ネガティブなものを解消してくれるものに、より多くの価値

を感じます。

お客様の「不」は金鉱であり発見することで企業価値が飛躍的に高まる可能性を秘めています。

「不」は統計データやアンケート調査から感知することはできません。「不」という市場機会は

直接、顧客に会って聞くこと、会話をするという一次情報の中にあります。

また、自分の感じた「不満」「不安」「不便」を解消して億万長者になった例は数多くあります。

目前のチャンスを感知する観察力・洞察力を普段から強く意識して磨くことが大事です。

第2のプロセス 問題解決のための異なる「アプローチ」

「不」の問題を発見したあとは、解決策を模索します。すでに実践されている方法ではなく、

異なるアプローチを組み合わせた新たな発想で考えます。異なるアプローチとは、

「逆転の発想」「異業種のヒント」などです。

「不」は普通で構いません。それを実現するための「非常識なマーケティング」

「非凡なビジネスモデル」が成功のカギとなります。

「平凡な不」でも見方を変えるだけで誰も気付かなかった金鉱を発見できる可能性があります。

「平凡な不」または「普通のアイディア」もアプローチ次第です。

第3のプロセス 誰よりも早く「実行」する

机上で計画を練っているだけでは先に進めません。

実行に移し、それによって得られる生のデータを収集することが先決です。

取得したデータを分析して、最初からやり直すのではなく間違ったところから効率よく再度挑戦

します。

早く実行するといっても命運をかけて大勝負に出る必要はありません。

試作品を作ったり、小さくテスト販売したり、無料サンプルを配布したりなどの小さな実験を

繰り返し有益なデータを収集・活用することです。

許されない失敗ではなく、許される失敗を何度も繰り返すことで完成度を高めます。

第4のプロセス 予測との差異を「分析」する

すばやく実行してデータを収集したあとは、定性的なデータを分析して、仮説を立てます。

そこに想定外の極めて有望なチャンスが眠っている可能性があります。

想定外の起業のヒントを見逃さないことです。

ペイパルは携帯端末のセキュリティサービスを主業務としていました。

デモ版のウェブ決済サービスが、思いのほか人気になり、今や世界有数の決済サービス会社に

なっています。

ちなみに、この会社の設立者の一人がイーロン・マスク氏です。

数字の奥に隠された消費者心理を読み解き、想定外の有望なチャンスを逃さないことが

重要です。

第5のプロセス 環境の変化に「適応」する

主力事業を喪失するほどの変化にさらされる時が、訪れるかもしれません。

市場そのものが縮小消滅してしまう可能性があるからです。

富士フィルムは基幹業務の写真事業から事実上撤退しました。

カラーフィルム全盛だった1980年代から舵を切り、写真市場が消失するころには新規事業の

収益化に成功していました。

化粧品、医薬品、再生医療と後発ながら競争力のある事業へと育っていたのです。

環境の変化に対応するために早めに察知して変態することは、継続存続に必要不可欠です。

5Aサイクルの中心軸は「理念」

理念とは、顧客価値の創造と利益追求すなはち、「顧客の幸せを実現することによって利益を

得る」ためのブレない軸となります。5Aを回す根幹となります。

顧客価値とは、製品やサービスのベネフィット(便益)から顧客が負担する必要コストを引いた

ものになります。理念がブレるようであれば、一旦立ち止まり、しっかり自分の腑に落ちるまで

自分にとってのビジネス理念は、何なのか見つめ直す必要があります。

最近ではパーパス(存在意義)という概念に進化しています。

劇的な復活を果たしたソニーグループのパーパスは「クリエイティビティとテクノロジーの力で、

世界を感動で満たす」というものです。 

「それは感動するか?」が開発製品化の基準になっています。

単純に利益だけ追求していればよかった時代は終わりました。

社会的貢献を第一とする志本主義時代(20世紀は資本主義時代)の到来です。

“「5Aサイクル」は、ビジネスを作り出し、育てるために必要な循環プロセスをフレームワーク

としてまとめたものです。

一度プロセスを実行して終わりではなく、PDCAのように何度もサイクルをまわすことで、

ビジネスのクオリティ、収益性、競合優位性も高まります。

これらのビジネスプロセスをまわす習慣がどれほど身についているか、それによって顧客に対して

どれくらいの価値を提供できているかが、21世紀のビジネスにおける勝負の分かれ目になりま

す。”
『思考の法則』より引用

“「5Aサイクル」を何度も高速回転させるときに、遠心力でふらふらしないようにしなければい

けません。

そのための中心軸が、「理念」です。

理念は、なぜビジネスを行うのか、ビジネスによってどんな事を成し遂げたいのか、その根本に

あたるもの。

顧客への価値提供を通じて、顧客も企業も、関連するすべてのプレーヤーがWin-Winにな

れるものを目指すべきです。”
『思考の法則』より引用

5Aサイクルの認知(Awareness)に着目

【グラミン銀行】

低金利、無担保、少額融資。

銀行のビジネスモデルを覆した銀行。

通常、銀行は資力のない会社にはお金を貸しません。

きちんと利子を払って、元金を返してくれる所に貸します。

利子を払えない、元金も返せそうもない、担保もない所にお金を貸してしまえば、自らが倒産する

可能があります。

これとは正反対の低金利、無担保融資、貧困層を対象にしたものが、マイクロファイナンスと呼ば

れる金融ビジネスモデルです。

バングラディシュのグラミン銀行がはじめました。

当初うまく行くか疑問視する向きもありましたが、この金融システムは大成功を収めました。

今や世界規模で利用されています。

5Aサイクルのアプローチ(Approach)に着目

【サウスウエスト航空】

サウスウエスト航空が出現するまで、飛行機の移動は出発地から目的地まで、直接飛ぶことはなく

ほとんど、ハブ空港を経由していました。

効率よく運営すればコストを抑えられ、運賃ももっと安く設定できる可能性を秘めていました。

そこで、この航空会社設立メンバーは

①ハブ空港を経由しない

②空港での短時間ステイ

③機体を1機種に統一

④機内食ドリンクサービスなし

⑤朝の会議に間に合うようにフライトスケジュール設計

といった既存のビジネスモデルを大きく覆す施策を実地したのです。

その結果、ライバル会社の航空運賃はおろか、長距離バス会社の運賃よりも安く設定することが

でき、今や米国を代表する航空会社となりました。

業界の中だけではなく、考えられるあらゆる交通手段の中で、最安値を目指した驚異の戦略です。

5Aサイクルの実行(Action)に着目

ジェームズ・C・コリンズらが調査した、ビジョナリーカンパニーの条件は意外なものでした。

「素晴らしいアイディアがあり、それを世に出すために会社を設立した」のではなく、「とりあえ

ず会社を作ったそしてあらゆる可能性を試した」事例が多かったのです。

【ヒューレットパッカード】

創業時はダイエット用電気ショック機、便器の洗浄センサーなど、色々チャレンジしていました。

1972年、科学計算機(電卓)で大成功を収めるまで起業から33年も経ています。

今では世界的な優良企業として名を馳せています。

【ソニーグループ】

創業時には電気炊飯器を試作し、失敗したりしています。

最初の事業ドメインであるオーディオ・ビジュアルの見通しが立つまで、設立から5年ほど

かかっています。

もしこの電気炊飯器にこだわっていたならば、エンターテイメントをはじめとした現在の

ソニーグループは、なかったのかもしれません。

下手な戦略よりもトライ&エラーが大事です。

5Aサイクルの分析(Anaiysis)に着目

【俺のフレンチ】

飲食サービス業の基本指標

売上=客数×客単価

客数=収容可能人数×回転数

飲食業の主要業績評価指数は基本的に回転数と考えられます。

腕利きの料理人を揃え、高級食材をふんだんに使用した最高級の料理を居酒屋並み料金で

提供するには、回転数を上げることが最重要条件になります。

収容可能人数を増加させると家賃、スタッフなど経費がかさみ経営が圧迫されます。

立席で高級フレンチを食べる店にはたして、お客様が来店するのか疑問視する向きも

多い中、フタを開けてみると大繁盛店となりました。

驚異の原価率45%(通常30%に抑えるのが要諦)も常識外れの回転率でなんなく吸収し、

利益を確保しています。

自らのビジネスに於ける主要業績評価指数を確実に把握することが重要です。

5Aサイクルの適応(Adjustment)に着目

【アマゾン】

累積赤字1兆円でも事業を継続したジェフ・ベゾス。

通常、赤字1兆円にも達すると、撤退を考えますが、創業者ジェフ・ベゾスはそうではありません

でした。

キャッシュフローをうまく回しながら事業を拡大し、顧客の要望に適応し続けました。

赤字だけに目を向けたなら撤退すべきという判断ですが、潤沢なキャッシュフローは顧客に支持さ

れていることの証明にもなります。

基幹システムを自社サーバーに切り替える大冒険を成功させ、その発展形のクラウドサービス

AWSは銀行、行政、多くの企業に利用されシェアは30%を超えます。

小さなガレージからはじまったオンライン書店はGAFAという世界巨大企業の一角を占めるまで

に成長しました。

徹底した顧客第一主義にてお客様の期待、要望に応え続けたアマゾンは、市場のニーズに適応し、

さらにウォンツを創出し続けた企業といえます。

まとめ

現役起業家、株式会社ショーケースのCEO永田豊志氏が執筆された『思考の法則』を要約させて

頂きました。

起業そして会社が存続するためには、イノベーションを起こし続けなければなりません。

そのためにはロジカルシンキングや分析フレームワークだけではやがて行き詰ってしまう可能性が

高いのです。

優れた起業家、経営者は、頭脳明晰、論理的思考が優れているといったこととは、違う

イノベーションを起こすための循環システム思考を持っています。

それが「5Aサイクル」と呼ばれるものです。

イノベーション力は起業家、経営者だけに求められるものではなく、ビジネスパーソンに必要な

能力です。

営業、経理、総務どの分野でも、効率化のスキルだけでは生き残れない時代になっています。

大きな変革でなくても小さな変革でも構わないのです。

「5Aサイクル」をまわしてイノベーションを生み出すことで、ビジネスパーソンとしてより

価値ある存在となることが可能になります。

参照

『トップ1%の人だけが実践している思考の法則』:かんき出版:著者 永田豊志

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