「刀」森岡流マーケティングの真髄に触れる

マーケティング

マーケター森岡毅さんの熱い思い

私は本当に長期間そのことだけを考えて考え抜いた先にアイディアが出てくる。
そこは地道な努力をするしかないと思っている。
ただ皆さんに誤解なく伝わればいいと思いますが、自分のお客様をもっと喜ばせるために
何が必要だろうということを徹底的に考えている人が果たして何人いるんだろう。

誰も何も決めないような会議のために、資料を作ることばかりやっている人はいっぱいいるが、
本当に大事なのは価値を生み出すところ。そこの1時間でも真剣に時間を使う人が増えれば、
日本はまだまだやっていける。日本はまだまだ捨てたもんじゃないと思っているし、日本の企業は可能性がある。もっと伸びると思っている。
(カンブリア宮殿、2021年8月19日放送、客を惹きつける極意!)

突き抜ける探求心

アクセスが悪く、山しかない「ネスタリゾート神戸」を再建するために猟師免許を取得し、
山の虜になる人、猟師の本能を分析

害獣に指定されているエゾシカを狩って自分で解体して食べたり、山に籠って何日か食べ物にありつけなかったり、とマーケテイング、お客様を喜ばせるために、ここまで真剣に研究する人が他にいるのだろうか。という感じです。

消費者理解

マーケティングで大事なことは、消費者理解。消費者すらも言葉にできない、なぜ自分がその商品を買うのかをその行動から洞察する能力、本能レベルで選択している構造を解き明かす能力

狂人と凡人の両方を理解

それには狂人レベルで本能を捉える必要がある。2018年に「ネスタリゾート神戸」と協働するにあたり、狂人として研究対象としたのが猟師。猟師免許を取得したり、猟銃の管理など面倒なことをしてでも、危険な目に遭う可能性があっても、山で狩りをして色々なことを体験したい人、
猟師。いわゆるはたから見たら狂人。普通の凡人を完全に理解するために狂人の本能を構造化する。凡人の理解にも時間をかける。そこから普通、一般の人に刺さる仮説を作り出す。本能が支配する言語化できない選択を構造化することで自然とコンセプトが見えてくる。

マーケティングは知的冒険

なぜ、狂人レベルを分析対象とするのか。普通の人では見えづらい本能がわかりやすいから。
どんな犠牲を払ってでも、山の中で色々なことをするのが楽しくてしょうがない人。
それが、猟師。もし、キャンパーが研究対象だったら「ネスタリゾート神戸」を再建させた価値ある仮説は生まれなかったかもです。山を楽しむ本能を理解する分析対象を猟師にしたのも、真剣に
長考した結果だと思います。また、分析する時はマネごとではなく、徹底的に突き詰める必要がある。これは知的冒険でもある。

流行をとことん追求

人々が熱狂しているものの本質を捉えるために、ガンダムのプラモデルや、漫画は500冊以上
所蔵。課金制ゲームには400万円以上投入。徹底的にやることを追及しています。

高等数学シュミレーション

本能レベルで消費者理解を達成し価値創造できる仮説(一般化)を生み出した後は、高等数学を
駆使して「予測」「検証」をして精度を高める。これにより8~9割がた売上・収益を実行前に把握可能。ここまでくればもはや失敗するほうが難しい状態。森岡毅率いる「刀」のプロジェクト成功率100%も頷けます。但し、数式は仮説自体を生み出せない

本能とは何か

生存するために行動が本能レベルで大脳を経ずに意思決定できる。生命維持に近い部分、脳の極めて原始的な部分で、仕組みに沿って処理される、それが本能です。
本能は十数通りあると森岡毅さんは分析している。さらに7通り位に絞り込める。
キリスト教でいうところの七つの大罪に近い。
本能がわかっていれば、どの事業でもどの本能を刺激すればよいかというところで仮説を立てやすくなる。消費に本能が深く関わっていることを発見し、解明した人は今までいなかったのではないでしょうか。

ネスタリゾート神戸

2001年に廃止が決定された年金受給者のための保養施設「グリーンピア三木」を2016年、地場企業による「ネスタリゾート神戸」として再スタートさせたが、苦戦していた。
2018年9月「大自然の冒険テーマパーク」というコンセプトのもと再々出発。
一般消費者の本能に突き刺さる、山を生かしたアトラクションを次々に考案投入。しかも低予算。
1年で売上2.6倍。2020年12月期初の黒字化。(営業利益:償却前)

農林中金バリューインベストメンツ

長期間の積立型投資信託運用。
機関投資家向けのファンド商品を一般向けに販売を考える。
規制業種のため金融の言葉しか使わない閉ざされたムラ社会のなかでやっていけた。
また、マーケテイングの手法も必要ではなかった。
2019年、森岡毅率いるマーケテイング集団「刀」と協働開始。
一般消費者が投資に対して持っているイメージはギャンブル・投機。
金融商品そのものが「よくわからない」「不安」「面倒くさい」
誰かが儲かると誰かが損をするゼロサムゲームだと思われている。
実はそうではなくて世界経済は人口が増えてきているので、どんどんパイは大きくなって
いる。この成長するパイの中からシェアを少し自分のためにもらうのが投資
の考え方。
この考え方を理解してもらい、それぞれに合った金融商品を自分の目で選んでもらえるよう
にする。
長期投資は長い時間をかけて経済的に豊かになる安心を担保することができる。
預金に代わる資産形成になることを一般消費者にわかりやすく伝えることを提案。
商品名も「農林中金パートナーズ米国株式長期厳選ファンド」から親しみやすい
「おおぶね」に変更。本能的に安心できるネーミング。
学生向け投資講座。専門用語を使わない公開講座。初心者が投資について学べる本を出版。
投資の啓蒙活動を開始。こうしたアプローチの結果、「おおぶね」の口座数約7倍に増加。
消費者視点で金融商品の価値をちゃんと理解させることができているという状態から金融業界は
かなり遠い。
証拠として日本には個人金融資産は膨大な金額がある。実は1000兆円を超えている。
預金が預金のまま投資に回されずに積み上がっている。日本社会全体にとっても、豊かに一生を
送るという個人の経済状況のためにも、これはものすごく改善しないといけない問題

(カンブリア宮殿、2021年8月19日放送、客を惹きつける極意!)

西武園ゆうえんち

2021年5月 埼玉県所沢市 西武園ゆうえんち、リニューアルオープン。
リニューアルの予算は100億円。
ちなみに富士急ハイランドの「高飛車」約30億円、ジェットコースター「ええじゃないか」
約36億円。すべてを新しくすることはほぼ不可能。
100億円で遊園地を作り変えるのは至難の業。
今あるものをできるだけ生かさなければいけない
古さを逆手に取る。「昭和の世界観」で客を惹きつける。
昭和30~40年代の商店街を再現。
古いではなく懐かしいと感じてもらう。
その上で狙いのライブ型アトラクション。「ゴジラ・ザ・ライド」には予算をつぎ込んだ。
最新のテーマで作り替えたとすると10年後には廃れる。
投資効率的には死なないものでパークを作ったほうがいい。
昭和はもう終わっている。時間がたつほどファンタジーになる。
死なないものでパークを作れたら長期にわたって耐えられる
限られた予算で見事に蘇らせた。
昭和レトロの理由。
昭和レトロはしんみりした昔懐かしい静かなイメージを想像する方が多い。
「本当に西武園は大丈夫なのか?」と。だが、これには勝算があった。
昭和レトロで集客しようと思っていないから。昭和のあの頃の「絶対的な幸福感」
と「前向きな感情」この「幸せ感」で集客しようと思っている。
「幸福感」と僕らは呼んでいる。
例えば「夏祭り」や「花火」は昭和の幸せなあの頃の家族の記憶や原体験。
「幸せ」の記号で昭和から色々な物が消費者の頭の中に連想される。
これをうまく言葉は悪いがこれを利用した方が投資が少なくて済む。
70年前に作られたパークにはすごく古い遊具もあるがあの頃のものだと思うと、
突然アンティークのように思えて来る。価値を持つ。
最新のパークだと思って入ってくると「古い遊具」と思われるものがすごく価値があるものに見えてくる。
「幸福感」ということではディズニーランドのミッキーマウスとまったく同じ。
彼らは西洋のディズニーというフォーマットで「幸せ感」をを売っている
我々は日本のあの頃の昭和のパッケージで同じ「幸せ感」を売る。もちろん規模が大きいので
ディズニーにシェアで勝てると思っていないが、「西武園ゆうえんち」が所沢で50年後100年後も
続いていくために必要なパイは取れると計算している。
表面に見えるものではなく「幸福感」でお客様に喜んでもらう
(カンブリア宮殿、2021年8月19日放送、客を惹きつける極意!)

まとめ

「ネスタリゾート神戸」自然回帰欲求刺激。「農林中金バリューインベストメンツ」損失回避欲求を抑制し、安心安全を求める欲求を刺激。「西武園ゆうえんち」心地よい幸せな気分を味わいたいという快適欲求を刺激。と推測できますが、森岡毅さんはもっと深いところで分析されていると考えるのが妥当です。

森岡流マーケティングのプロセス

消費者理解のため徹底的に狂人の本能を研究。→コンセプトを生み出す。→一般化して価値創造できる仮説を立てる。→消費者調査で仮説が本当に正しいかどうか確認。→数学モデルで予測・検証(緻密化)。→最も投資効率の高い事業計画にて実行。→楽に勝手に売れて行く状況を作り出す。という感じではないでしょうか。

森岡毅プロフィール

1972年生まれ、兵庫県伊丹市出身。小学生の頃から数学の専門書を読み漁る。県立伊丹高、
神戸大経営学部卒。1996年、P&G入社。ヘアカラー担当時には、毎日違う色に髪を染める。
ヴィダルサスーンのブランドマネージャー就任時には、徹底的にデータ分析してシェアを3倍に
拡大する。いくつかの要職を歴任後、2010年にユー・エス・ジェイ入社。
倒産の危機にあったUSJを数年で回復させ、世界的にも有名なテーマパークに育てる。
2017年にUSJを退社し、マーケティング集団「刀」を設立。プロジェクト成功率100%を誇る。

参考

テレビ東京
カンブリア宮殿、2021年8月19日放送、客を惹きつける極意!
ダイヤモンド・オンライン
破綻したグリーンピアを再生すべく森岡毅が歩んだ「獣道」
ダイヤモンド・オンライン
森岡毅が関わるプロジェクトはなぜ当たり続けるのか?
ダイヤモンド・オンライン
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ダイヤモンド・オンライン
自分を「ブランド」にする技術:森岡毅インタビュー[2]
ダイヤモンド・オンライン
USJ再建の森岡毅が語る、マーケティング下手な企業に足りない3つの視点
神戸新聞NEXT
「神戸の未来はやばい」USJ再建のマーケター森岡毅さん
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